電子契約とは?仕組みや書面契約との違いを解説

昨今、新たな契約締結の形として注目を集めている「電子契約」。

紙を用いないため、輸送コストの削減や印鑑を押す手間を省くことができるため導入のメリットは大きいです。
とはいえ、電子契約とはどういうものなのか、その仕組みを理解している方は少ないのではないでしょうか。

今回は、電子契約の仕組みや書面契約との違いについて解説します。

電子契約とは

電子契約とは、電子ファイルをインターネット上で共有し電子署名を施すことで契約を締結し、企業のサーバー等に電子ファイルをデータとして保管しておく契約方式を言います。

電子署名法やe-文書法といった法律も制定され、電子証明書が普及するとともに電子契約を導入しやすい環境が整備されてきました。
2020年4月から施工された改正民法においても、契約方式の自由が定められ、契約の成立に必ずしも書面は必要ないという原則が明文化されました。

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

引用元: e-gov 法令検索 “民法 第五百二十二条第二項”

電子契約導入の流れはますます加速していると言えるでしょう。

電子契約においては紙の契約書は使用されません。そのため、後述の通り、書面契約にはない様々なメリットがあります。

電子契約と書面契約の違い(電子契約の4つのメリット)

ここでは、電子契約と書面契約の違いを、電子契約のメリットとしてご紹介します。

印紙税を削減できる

通常、紙の契約書を用いて契約を締結した場合、契約書は課税文書として印紙税が課税されます。
製造業や通信業など、契約数が多い業種においては、印紙税の負担は無視できません。
建設業や不動産業など、契約書で規定する金額が大きい場合は印紙税の額も増えるので、これらの業種でも印紙税は重い負担と言えるでしょう。

しかし、電子契約においては、紙を用いません。つまり、課税対象となる“文書”が存在しないのです。
そのため、電子契約においては印紙税を負担する必要はありません

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

引用元: e-gov 法令検索 “印紙税法 第二条

事業コストを削減できる

書面契約では、契約書の郵送(もしくは持参)・保管といった作業が必要になるため費用や時間がかかってしまいます。

電子契約では、契約書のやり取りはインターネット上で行われるため郵送コストは不要。
サーバーやクラウドストレージに電子データを保管するため契約書の保管に場所をとることもありません。

作業の効率化を図れる

前述の通り、電子契約では契約書を電子データとしてサーバー等に保管します。
それにより、物理的に場所を取らないため整理されたオフィスを保つことができます。

また、過去の契約書を探す際もサーバー内で契約名や取引先の名称で検索をかければすぐに見つかります。
紙の契約書のように倉庫や膨大なファイルの中を漁る必要がなくなるので、時間短縮による大幅な事業効率化を図れるでしょう。

コンプライアンスを強化できる

書面契約では、物理的に紙を保管するためどうしても紛失・劣化のリスクが伴います。

一方、電子契約では電子データをサーバー等に保管するため、紛失・劣化のおそれがありません。
仮に本社が災害に見舞われたとしても、電子データは無傷です。また、きちんとセキュリティを施すことで契約内容の改ざんのリスクを無くすことも可能です。

なぜハンコがないのに契約が成立するのか?(電子契約の法的根拠について)

ハンコの代わりに電子署名

書面契約では、契約者の署名や押印(ハンコ)で契約者の“契約を締結する”という意思を明らかにすることで契約を有効に成立させています。

しかし、電子契約ではハンコは用いません。電子契約では、電子署名という方法で契約者の意思を明らかにします。
電子署名とは、電磁的記録(電子データ)に付与する電子的な証憑を言います。
電子署名は、紙の書面における押印(ハンコ)・署名と同様の効力を持ちます。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

引用元: e-gov 法令検索 “電子署名及び認証業務に関する法律 第三条

電子証明書で改ざんを防止

電子証明書とは、特定の個人・法人の存在や信頼性を証明するインターネット上の身分証明書です。
電子証明書は、認証局(CA:Certification Authority)が発行し、公開鍵暗号基盤(PKI:Public Key infrastructure)と呼ばれる暗号技術により電子署名を行なった者の本人性を証明する仕組みとなっています。

電子契約において電子署名をする際には電子証明書を用いることで改ざんを防止するため、高いセキュリティを実現した上で契約を締結できます

タイムスタンプでいつ契約が成立したのか証明できる

電子署名だけでも署名をした時刻がわかりますが、事後的な改ざんが不可能とは言い切れません。
そこで、電子署名の署名時刻が間違いないということを証明するために用いられるのが、タイムスタンプです。

タイムスタンプは、

  • タイムスタンプが押された時刻に当該文書が存在していること
  • タイムスタンプが押された時刻以降、当該文書の内容が変更されていないこと

の2つを証明する機能を持ちます。

電子契約のセキュリティについて

電子契約においては、前述した電子署名の暗号化技術によりセキュリテイを担保しています。
これは、対になる暗号化鍵と復号鍵のペアを作り、特定の復号鍵で復号できる暗号文がある場合、当該暗号文はその復号鍵とペアの暗号化鍵で暗号化したものであると証明できるようにする仕組みです。暗号化鍵と復号鍵のうち、復号鍵をインターネット上に公開し、暗号化鍵を契約者のみが知りうるパスワードで管理するのです。
これにより、復号鍵で復号できる暗号文は、その復号鍵とペアの暗号化鍵を管理する者によって暗号化されたものであるとの推定がはたらきます。

つまり、電子契約においては、暗号化により、契約書の電子データの作成者と、契約締結後電子データが改ざんされていないことを推定できる電子署名という仕組みによりセキュリテイが確保されているのです。
そして、タイムスタンプで電子署名時刻を証明することでさらにセキュリテイを高めています。

電子契約の2つの注意点

コストの削減や業務の効率化など、メリットの多い電子契約ですが、導入にあたって注意すべき点もあります。

書面契約が必要な契約類型もある

契約方式自由の原則により、書面を用いずとも契約を締結できるのが基本ですが、一部の契約類型では法律により書面契約が義務付けられています。

具体的には、以下3つの契約類型では書面契約が必要であるため電子契約によって契約を締結することはできません。

相手方次第では電子契約できない場合もある

自社が電子契約を導入していても、相手方が電子契約を導入しているとは限りません。
相手方が慣れない電子契約を嫌い、結局は書面で契約を締結するという事態になる可能性もあります。

現在では、相手方の手間やコストをなるべく少なくする設計のサービスも登場しています。
電子契約を導入する際は、相手方にとっての使いやすさも検討するとよいでしょう。

まとめ

今回は、電子契約について、その仕組みや書面契約との違い、電子契約の注意点などを解説しました。
電子契約は契約締結にかかるコストを削減したり業務の効率化を実現したりと、導入のメリットが大きいものです。
電子署名により、セキュリテイを担保したうえで書面におけるハンコと同様の法的効果を生じさせることができます。
日々の業務改善により生産性を高めるためにも、電子契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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